第六章

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ぬるめのシャワーを浴びながら、この処の出来事を反芻する。 榊を男性として意識した事、若くて綺麗な蒼と出逢った事。多分、これ迄も出逢いのきっかけは沢山有ったのだと思う。 仕事が充実していたのも事実で、恋愛は大して重要でも無いと感じていた。 一人で過ごす週末も、特定の誰かに縛られる事に比べれば有意義な時間だと、思っていた。 それは、確かに間違いではないのだろう。けれども、きちんと人生に向き合った時、パートナーが欲しくなった。 そうした、自分の意識の変化が今の状況をもたらせているのだろう。 以前と違うのは、抱くとか抱かれると云った行為を、二次的な物だと感じる事かも知れない。 若い頃であれば、二人の男と寝る様な女は嫌悪すべき対象だった。けれども、それは食事をしたり睡眠を摂ると云った自然な欲求なのだとも感じ始めていた。 勿論、キチンとパートナーとして定めたならば許されない行為である事は理解している。 けれども、例えば今の私が数年を掛けて一人の男性を見定めてそれが不幸な結論になれば、次のパートナーを探す事はより難しくなるのだろう。 どこか本能的な部分で、そうした事を理解して今の私が居るのだと思う。 「理屈っぽいね~」 バスルームの鏡に、一人で話し掛ける。余計な事を考える自分が、滑稽にも思えた。
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