第六章

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真っ白なバスローブを羽織って、榊がこちらに歩いてくる。 片側を空けてあるソファー、榊がその空間へストンと座った。私は、手に持ったままのグラスを差し出す。 冷えたペリエを飲み干す横顔を見つめる。空になったグラスに、もう一度冷えたペリエを満たした。 グラスを片手に、榊を跨ぐ様にして寝室の扉へ向かう。その姿を眺めながら、ゆっくりと榊も寝室へ移動した。 余裕の無かった前回とは違う、ベッドに腰掛ける私の横に座ると繁々と私を見つめる。 「どうしました?社長」 「せめて、二人で居る時に、社長はやめて欲しくものだな」 「そう言われても、困りますよ。名前で呼ぶのも照れ臭いですしね」 「そうか?読んでみてくれよ。名前で…」 十年近く、社長と呼んでいる榊を名前で呼ぶ。それは意外に難しい…榊の名前。 「俊介……さん」 何故だか、肌を晒すより恥ずかしい気がする。その様子を笑って見ている榊がいる。
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