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暫くの間、榊は身じろぎもしないで私の胸に抱かれていた。
私は、榊の頭を撫で続ける。いっそ、このままで朝を迎えるのも良いかもと感じている。
胸の辺りから榊の声が響いた…
「悔しいな…」
榊が自覚しているかどうかは、わからないけれど甘えた声に聞こえる。
「なにが…ですか?」
「お前が、俺だけのものじゃ無いって事が…」
胸の奥にチクリとした痛みが走る。榊の言葉は、もちろん会ったこともない男に向けられている。
私は、その言葉には答えないで榊を強く引き寄せた。答えが出せない私には、そうする事ぐらいしか出来ない。
榊の顔が近づいて、少し荒々しく唇を重ねる。見ず知らずの相手の影を消し去る様に、長い口づけに合わせて、両手は私の全身を弄っている。
私のすべてのパーツが、自分のものだと言わんばかりに、全身隅々まで、榊は唇を這わせた。
唇から喉元へ、鎖骨のくぼみから肩へ、上腕を辿って指の先端まで…丁寧に、柔らかにまるで儀式の様にその行為が続く。
触れられる度に、それらのパーツが敏感に反応してゆく。自分でも意識をしたことが無い部分の存在が、明らかにされてゆく様だった。
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「酷い女だな…」
荒い息を吐きながら、胸に顔を埋める私に、榊が呟いた。
答える術のない私は、返事の代わりに榊の肌に軽く歯を立てる。
「それも、酷い返事だ…」
笑いながらもう一度呟く榊に、私ももう一度、強めに噛んで応えた。
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