第六章

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日常に戻れば、恋愛など大した事では無いように感じられる。その点では、とても可愛い女にはなれそうにない。 ビジネスの現場では、未だに女性管理職に対する偏見は現実として存在する。 「ほう、女性の部長さんですか…」 言葉の影に隠されているのは、明らかに不満であったり妙な男達のプライドだ。三十半ばの小娘が、対等な立場でビジネスを進める事が許せない。 それは、自然な反応だと割り切る迄には、随分時間がかかった。加えて、急速に台頭する新興企業に対しての反感もあるのだろう。 叩き上げでの仕上がってきた自負を持つ重役達、そんな男達にすれば偶々時流に乗って拡大した新参者企業。 そんな蔑みの心境も、わからなくは無い。まして、下請けの立場での取引であれば、その心情は尚更のものだろう。 そういった世界で、私には戦うべき相手が多いのだ。 その手の男達と上手く物事が進められる様になったのは、最近の事なのかもしれない。 環境の変化も大きいのだと思う、新しいビジネスの枠組みについて行けない者達が、現場を離れ出した。 情や、貸し借りで仕事を進める事など、姿を消した。相手が誰であろうと、効率や、採算性や、将来的な利益が見込めれば良い。 至極当たり前の事ではあるけれど、そうした事が私には重要だった。
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