第六章

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確かにそうだろう、仕事中の榊は生命力に溢れている。オーラという物が存在するならば、恐らく身体中から溢れているだろう。 器用でアグレッシブで、何でも手に入れた男なのだと思っていた。 それなのに、目の前に居る榊はとても不器用な普通の男に見えてしまう。その事が私の態度にも余裕を持たせるのかもしれない。 言い換えれば、母性本能を擽られているのだと思う。抱き締めれば私も幸福を感じるだろうとも思えてしまう。 この男は、私を必要としている。誰よりも強く見える男が、自分の前でだけ隙を見せる。なんの駆け引きもない。 そんな姿に、心を動かされないでいられる女がいるだろうか… 少なくとも、今の私は揺れている。
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