第六章

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半年程前だろうか、上場前からの榊の腹心であった役員が、方針の違いから独立してしまう。 榊が一番信頼していた役員だった。彼が担当していた事業は、上場時には会社の柱といえるものだった。 けれども、事業規模の拡大につれて主流の事業では無くなってしまう。 会社をどこ迄も拡大したい榊は、かつて柱であったその事業を、それ以上伸びないと判断する。そして、売却を検討した。 その裏には、傍系になりつつある事業に対して肩入れする、彼の未練を断ち切りたいとの意図が有ったのだと思う。 榊の決断は、裏目に出てしまう。彼は思い入れのある事業ごと買い取る決断をする。 榊程ではないにしろ、役員としては一番多い株式の保有者だった。持ち株を手放す代わりに、事業ごと引受ける。そんな提案だったと聞いた。 そうして、一番の理解者は榊の元を離れてしまったのだった。 榊にとって最悪の展開でもあっただろう。
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