第六章

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目の前に置かれた、大きめのワイングラスに赤のワインが注がれる。続けて、ユキさんは自分のグラスにも液体を注ぐ。 「うん、良い香り。でも暫く時間がかかりそうだから、ゆっくり愉しみましょうね」 私も、注がれたグラスの香りを嗅ぎ取った。驚く程、香りは少なかった、そのままグラスをテーブルへ戻す。 テーブルの上で、軽く揺り起こす風にぐらすを回す。グラスから豊潤な香りが漂い始める。 「どうしたの?悩んでそうね」 カウンターの中から、そうユキさんが話出した。 「わかりますか?悩んでる…そうですね。聞いても良いですか。ユキさん、どうして今の旦那さん選んだんですか?」 「ああ~それを聞くんだ」 愉快そうに笑いながら、少し思案顔になった。 「どうして…か。何でだろうね、えりさん聞く人間違えてるかもよ。そうね…自分らしく居られるって処かな?」 「自分らしく…ですか。難しいですね、自分らしいって処から難しいです」 「だから、聞く人間違えてるのよ。私が気が付いたのも遅すぎるもの。そうね~私に理想を求めすぎないって処かな?」 確かに状況は違いすぎる、私はキャリアで働いているとは云っても、それは会社という基盤が有るからこそだと自覚している。 彼女は、自分自身が商品でありキャリアなのだろう。私に代わりは居ても、彼女の代わりはいない。
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