第六章

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おそらくもっと若い頃ならば、結婚すると云う事は彼女にとってマイナスだったのだろう。 女性であり、店を持ち…少なからず特定のパートナーの影は邪魔である事を、想像するに難しく無い。 「この処一緒にいらした男性の事?うちのスタッフ達にも、評判良かったからね~」 「そうなんですか?評判って」 思わず笑ってしまう。 「あら、大事な事よ。お二人とも気配りの出来る方みたいよ。人間性が出るのよね、えりさんが出入りするお店で、スタッフや周りにきちんと配慮出来るって。良く見てるからね、あの子達」 ちらちらと、彼女達が気に掛けていたのは、そうした事だったのだと漸く気が付いた。 私は、彼女達の視線は興味本位なのだと思っていた。 「そうですか、どうりで視線を感じると思った」 「ん~、まだまだね。うちのスタッフも、お客様に気を遣わせるなんて。あのね、うちの子達えりさんのファンが多いのよ。だから余計に気にしてたみたい」 「ファンですか…照れ臭いですね」 「あら、えりさんは素敵よ。あのね、うちのお客さまって一流って言われる方が多いじゃない。あの子達は、そうした方がされる振る舞いを感じてるからね、男の人に厳しいのよ」
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