第六章

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眠らなければいけない、そう思いつつ目が冴えてしまう。頭が冴えてしまったと云うべきか。 昨日は敬遠してしまった、蒼のカップに淹れたての珈琲。 涼やかな風が心地良いベランダに出てみる。街の灯りを眺めながら、自分らしくの意味を考えてみる。 そもそも、私は寂しいからパートナーが欲しかっただけなのだろうか。 生きてゆく上で、恋愛は大切な事だとは思う。好きだと言われれば嬉しくて、抱かれていれば満たされる。 それは、とても自然な事だ。けれども、それは一人の相手に対してずっと続くものなのだろうか? 愛しい相手は、これ迄にもいた。恋い焦がれる様な恋愛だってしてきた。それが、続かなかったのは、彼等が一生のパートナーでは無かったという事なのか。 そんな、単純そうな事すら分からなくなっている自分が虚しくなってしまう。 男達と違って、女にはある種のタイムリミットがある。それは残念ながら事実だろう。 子供を産むと云う選択。それが大きく人生そのものを左右する、四十歳で産んだとして、子供が成人した時の私は想像したく無い年齢だ。 肉体的にも、精神的にもそこがリミットなのかも知れない。 ずるい話だと思う…どれだけのキャリアを積んだとしても、全てを失う事も考え無ければいけない。 もちろん世の中には、キャリアも子育ても絶妙のバランスで手にする女達はいる。けれども、それは多くの女性の中のほんの一握りでしか無い。
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