第六章

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確か、彼は今年二十七になる筈だった。蒼と同い年… 時々、ぬけた事もするけれど、ソツなく仕事はこなす。けれども、何処かガツガツした処が無い。 彼だけでは無かった、言われた事や過去に経験のある事柄はこなす。けれども、新たな企画を立ち上げる時に、何処か拡がりを持ったアイデアが出ない。 自分の得意分野では、雄弁に語る。けれども、それを拡げる想像力が無い。 プライベートに仕事を持ち込むなど、まずしなかった。そうした部分で、情けなく感じる事もある。 ずっと、これ迄はそう感じてきた。けれども人生を愉しむと云う点では、私や榊より遥かに彼等の方が優秀なのでは…そう思えてしまう。 やり切れない思いが去来した。 それにしても、沈さんが一緒とはいえ北京で榊と二人…いっそ私も帰ろうかと思った。 中途半端な関係で、長く時間を過ごす事に戸惑いもある。
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