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この際、中止したって構わないとも思えた。取り立てて北京に用事があるわけでもなかった。
榊のほんの気紛れで決まった日程でもある。他のスタッフが参加しない事を、榊はどう感じるだろう。
少し遊ばせてやろう…そんな意図もあったのだと思う。
残念な表情を浮かべるだろうか?それとも、気にしないだろうか。
ずっと榊は強い男だと思い込んできた。けれども、どうやらそうではない。
案外こうした些細な事でダメージを受けるのかも知れない。そう思うと、様子を確かめたくなった。
メールでも、電話でも構わない用件だ。PCでスケジュールを確認すると、午後一には来客予定がなさそうだ。
「はい、秘書課佐藤です」
「佐野ですけど、午後一番で伺うから伝えてくれる?」
「わかりました、お伝えします。え~っと佐野さん、出張のお話なのですけど…」
「ええ、聞いてるわ。何かあったの?」
「すいません、母が入院する事になってしまって…あの、社長のお世話お願いします」
思わず吹き出した。結局、近くに居る者には色々とばれているものなのだ。
お世話と云う言葉に、そんな事が集約されている気がする。
気が付いていないのは、男達だけかもと思うと少し愉快だった。
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