第七章

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金曜日、早めに仕事を切り上げて買い物に出掛ける。早く終わった処で、予定が無い普段と比べれば今日の仕事のペースは凄まじいかったかもと思う。 いつも、早く仕事を終えて会社を出たい部下達を、冷ややかに見ていた。仕事なのだから…何も見えていなかったのは、私の方だ。 仕事同様に、大切なものはある。それを私は、意欲が無いと決め付けていなかっただろうか… 若い男の為に作る食材をカゴに入れながら、そんな事を考えるなんて…情けなくなってくる。 がむしゃらに走っているうちに、見えなくなるものは多いのだろうか。榊は、その典型かも知れない。 榊が見ているのは、同じ様なスタンスで行動する私では無いだろうか?もし、私が仕事に意欲を無くしたりすれば、榊の興味は離れてゆくだろうか… 食材を買う、誰かの為に料理をする。そんな愉しみと同時に、そんな分析の様な事を考える私は、やはり可愛げの無い女だろう。
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