第七章

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《仕事終わって帰るところなの。蒼くんは?》 あの山の中なのだろうか?喧騒も無い、静かな工房を思い浮かべる。独りで淡々と創作する気分は、どんなものなのだろうか。 誰にも拘束されない、自分だけの世界。私にとって、未知の世界だ。 あっと云う間に、返信が来る。きっと暇なのだろう。 《そうなんだ、もうすぐ教室が終わるんだけどね。良ければ食事しない?》 もう始めていたんだ、男達は肝心な事を話さない。少し躊躇したけれど、俄かに湧き出る寂しさには有難い誘いだった。 《何処に行けば良いの?》 《丸の内のTビルってわかるかな?三十分ぐらいで出られるけど…》 了解と短い返信をした、どの路線でもそれ迄には着くだろう。 仕方ないわね…そんな風に、自分に言わせてみるけれど、足取りは軽かった。
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