第八章

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会話をしながら、クロゼットの扉を開く。どうしようか…何を着るべきなのか、悩んでしまう。 「俊介さん?処で…どんな格好されてます?」 「ああ、普通の格好だよ。パンツに、ポロシャツかな、何でだ?それからさ…もう一回呼んでくれないか」 「ハイハイ、切りますよ。おとなしく待っててくださいね…俊介さん」 手の掛かる男、こんなに無防備な姿を晒すタイプだとは思って居なかった。 軽くメイクをする、パンツに真っ白なシャツ…着替えを済ませて、ベランダから下を覗く。 シルバーのベンツ、二人乗りのクーペが昨日蒼が車を止めた場所にあった。 片手に灰皿を持ち、車にもたれて煙草をくゆらせていた。 少しの間、その様子を上から眺める煙草の火を消して所在なさげにエントランスを見つめている。 何故だか、すぐに降りてゆく気にならない。もう少し、見ていたかった。 暫くすると、榊は車に乗り込んだ、ものの数十秒でまた車を降りて煙草に火を付けた。
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