第八章

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「本当ですね、子供みたい」 「そう言われても、腹も立たんからな…気にしてくれてありがとな、佐野」 少し意地悪をしてみたくなる… 「あら、私が俊介さんって呼ぶのに、佐野…ですか」 「あ~いや、どう呼べば良いんだよ。今更…」 「そうですか、じゃあ私も今更ですから、社長に戻しますよ」 「お前も意地が悪いな~。じゃあ、えりちゃんとか呼べば良いのか?」 「ちゃん…は、要りませんよね…普通」 「照れ臭いもんだな…あ~、えり…これで良いか?」 真っ直ぐに前を見つめて、こちらも見ない。心なしか、顔が赤い気がする。 「俊介さん…本気で、照れてます?」 「お前な…見りゃわかるだろ」 「可愛いですよ、俊介さん」 「もう良いよ…」 少し憮然とした表情を浮かべている榊。 不貞腐れたように、車のドアに頬杖を付いてそれでもゆったりとハンドルを切る。
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