第八章

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身体を包み込む風に潮の香りが混じりだした。 高速を降りて海岸沿いの道を走る、海を見渡せるレストランに車を止めた。 ラフなスタイルの榊は、何時もと違って歩き方もゆったりとしている。 そう云えば、まともに榊と過ごすのは初めてかも知れない。 彼の過ごすホテルの部屋、友人のレストランそれは彼のテリトリーだ。 人目も気にしないでお互いに知らない場所に出掛ける。余計な事を気にしなくて良い時間は、案外愉快だ。 俊介さん…気軽にそう呼ぶ気になれたのは、そんな気分のせいかもと感じる。 「そういえば、買い物をする筈だったよな」 「そうですね、すっかりと忘れてますよね。でも、買わなければいけない物が有るんですか?」 「いや…まあ、お前さん…えりを呼び出す為の口実だよ。理由でもつけないと、電話するのも気が引けるんだよ」 そう話しながら、苦笑いしている榊。
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