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「私に怒る資格なんてないわよ…」
蒼は笑いながら此方を見つめている。宣戦布告なんて言ったわりにサバサバした表情だと思う。
「そんなに難しい顔しないでよ。送るよ家まで」
私の返事も聞かないですたすたと前を歩く。細い身体なのに軽々とスーツケースを背負ったまま…
「蒼くん、重くないのかな?転がせば良いのに」
「ああ、確かにそうだね」
そう言いながらスーツケースを床に下ろすと、そのまま抱えるように座り込む。
「ほら、やっぱり重かったんじゃない」
ゆっくりと顔を上げて蒼が下から私を覗き込むように見つめた。
「そんな事じゃないよ…なんだか恰好悪いなって…俺」
「恰好悪いって…何が?」
「……凄く…嫉妬してる。あのヒトに…」
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