第十三章

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仕事が愉しいと云った処で、一つクリアすればまた次の事をクリアしなければいけなくて。 終わってしまった事は過去のもので、キャリアや経験を残す事はあっても、そのスキルは次に振り向ける為に使うだけの事だ。 蒼は作品として形を残す。榊は会社と云う形を残す。 私は充実した処で、何も残せるものはない。 そうして考えると、仕事が本当に愉しいのかすら疑問に思えてしまう。 恋愛にのめり込むオンナ達を何処か醒めた目で見ていたけれど、今の私より彼女達の方が随分と正しかったのではないのだろうか。 軽い自己嫌悪に浸りながら、のぼせている事に気が付いて慌てて湯船から出る。 冷たい床にへたり込んでのぼせが治まるのを待った。 こうして何かの拍子に倒れ込んでしまっても誰も助けてくれない状況にいる事に情けなくなった。
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