第十三章

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仕事を片付けて化粧室でメイクをなおす。疲れた顔、目まぐるしい一日だった。 新しい服を着て自分なりの決断をして出社した筈が、ものの数時間で振り出しに戻ってしまった。 この会社で十年と少し、普通では考えられない程の経験をして、代わりに普通の女としての愉しみから距離を置いてきた。 経験、人脈…そうした積み重ねた事を捨てる事に躊躇もしている。 結果を出す事の喜びや、人の上に立ち決断を任される事の快感は男だけのものでは無い。 そうした事を恋愛と秤にかける事は難しい。 タクシーを拾い待ち合わせ場所へ向かう、逃げていても苦しくなるだけだ。 きちんと榊と向き合おう。もちろん蒼ともだけれど。
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