第十三章

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レジで伝票を渡し清算をする。彼女は席を立った気配はない、ファミレスの階段を降りてすぐにタクシーを拾った。 別に彼女に何か言われる筋合いはないんだと、自分に言い聞かせながら、それでも早くこの場から立ち去りたかった。 蒼に電話をする事も考えたけれど、彼が悪いわけでもなく軽く話して良い事なのかもわからないのでは、電話など出来はしない。 苛々する気持ちを落ち着ける様に、タクシーのシートへ深く座り直して何度か深呼吸をする。 『貴女は自分の会社の社長と付き合ってればいいじゃない!』 余計なお世話で、不躾な言葉。嫌になる、彼女にではなく自分自身に腹が立つ。 目を潤ませて睨みつける表情が頭から離れない。 「すいません、行き先を変えてもらえますか」 遠まわりになるので多少料金が嵩むと告げて、タクシーは広い通りでUターン出来る場所を探した。
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