第十三章

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「いらっしゃいませ、お待ちしてましたよ」 柔かな表情でオーナーが迎えてくれた。 居心地の良い場所とは、大抵の場合には内装やインテリアといった空間そのものが醸し出す雰囲気からくるものではある。 けれども結局のところ人なのだと改めて感じる、彼もまた一流の部類なのだ。 「今晩は、もう来てますか?」 「ええ、ほんの数分前ですけれど。いつものお席ですよ」 少しだけ大袈裟に身振りで私を席の方へ誘う。 「ありがとう」 榊は通路の方へ身体を向ける席に手持ち無沙汰な風で座っていた。 そのままの姿勢で右手を軽く上げ、微妙な微笑みを浮かべる。 「忙しかったみたいだな」 「そうですね、出張明けですから。さすがに。先に何か飲まれていれば良かったのに」 「ああ、俺も来たばかりだよ」
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