第十五章

2/34
506人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
榊もそれを見越して事業内容がバッティングしない企業を選んだのだろう。 それならば、社員は同じ様に仕事を進める事ができる。 会社の創業者であり、シンボルであった榊が居なくなるだけだ。 もし私が榊と近い処に居なければ、今のような感情にはならなかったかもしれない。 やはり今感じる寂しさは、生活の大半を割いている会社で榊の存在を感じられなくなるという、個人的な感傷なのだろう。 そうであれば、その点は割り切るべき事なのだろう。私が考えたところで、榊は実行に移すだろう。 「わかりました、事業としては間違っていないと思います。今、うちに無いネットワークも営業的なネットワークも間違いなく相乗効果があるだろうと思います」 榊は満足そうに頷いた。そうしてまた話し始める。 「社長と部下としての仕事の話は終わりだ。もちろんうちの重役連中すら知らない事だ、言うまでもないが他言無用で頼む。 向こうも社長とごく一部の重役しか知らない事だからな」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!