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第十八章
「そうか、まあ好きにすれば良いさ。萎れてるお前を見てるのは愉しいもんじゃないしなぁ」
「また、そう云う事を…まあ、とにかくリフレッシュして帰りますよ。日本へは」
そうしてくれと呟いて、榊は珈琲カップを持ち上げる仕草をする。私もつられて同じようにした。
リビングへ戻ると榊と三浦は真面目な表情に戻って、なにやら今日の予定を二言三言で打ち合わせていた。
了解といった感じで頷いて、三浦が部屋に戻ってゆく。テーブルには、カップも皿も置いていない、キッチンに入ると既に洗い終えて並べてあった。
そつのない男なのだと思う、穏やかな表情やこうした気遣いは彼の過去にも関係するのかもしれないと、ふと思えた。
もしかすると、嫌われる事を極端に恐れているのかも…などと感じてしまう。
昨日の美里さんとのやり取りを思い出した、初めて見る不貞腐れた表情やぞんざいなモノ言いは新鮮だった。
野心も充分に持ち合わせているだろう、それでなければ榊のパートナーは務まらないだろう。別れた奥さんと暮らす友人とビジネスの話が出来るのも、その表れなのだろう。
そうした野心も充分に理解して、榊は三浦と組んでいる。立ち入れない―そんな風に感じているのも、榊の元へ簡単にはゆけない理由でもある。
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