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第十九章
どう答えれば良いのか分からなかった。
榊の指は相変わらず淡々と私の髪を撫でている。
「そのうち嫌われちゃいますね…きっと」
榊の身体が小刻みに揺れる。笑っているのだ。
「そうかもな。嫌う事はないだろうが、諦める事はあるのかも知れないし…お前が俺を嫌う事だってあるだろう?」
「どうでしょう?正直わかりません」
「正直だな、お前は」
「狡いだけですよ―きっと」
「別に構わんさ、狡いのはえりだけじゃない。俺だって似たようなもんだ」
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