第十九章

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榊は晴美さんとの事をそんな風に告げた。私にしても返す言葉が見当たらなかった。 「ふぅ…なんだか俺も聞きたくなるな」溜息の後榊が呟く。 榊に問いかけておいて私が答えない訳にはいかないだろう。無言で居ながらそう覚悟した。 「まあ、止めておくさ。なあ、メシでも喰いに行こうか?籠もっているのも性に合わんな」 榊の手が私の頭をポンと叩いて、勢いよくベッドから立ち上がった。榊の本音はわからない。 聞く事が単に嫌だったのか、私を気遣ったのか…どちらにしても良い男なのだ、と思う。 「そうですね、美味しいお店に連れていってください」 「バカ言え。そうそう美味いもんなんかあるもんか。なにしろ俺でさえ飽きあきするぐらいのボリュームと大雑把さだからな。繊細って言葉が無いんじゃないかと思うぞ」 愉快そうに笑いながらバスルームへと消えていった。
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