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第二十章
あの日、蒼はあっさりと帰っていった。マンションの下でタクシーから自分の車に乗り換えて。
本当は忙しい合間に迎えに来たのか、それとも自分の行動に満足したからなのか拍子抜けするほど軽く「じゃあ」と告げただけだった。
一人で部屋に戻るとキャリーバッグの中身を整理しなければいけない事に気がつく。
明日からは忙しい日々が始まる、そう考えると充実した気分になる。
暇を持て余していたから余計に恋愛が全ての中心になっていたのかも知れない。
ふと可笑しくなる…恋愛が中心である事がダメだと思っている自分。これまで、そうした女達を口には出さないまでも醒めた目でみていた。
もしかすると私は、そんな自分を否定する事が怖くて歪な形で恋愛にのめり込めないのかも知れないのだ。
そんな事を考えながら旅行の荷物を片付け、眠りについた。
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