第二十章

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ともかく場所が決まらない事には何も始まらない。榊が会社を手放した時に私も手持ちの株式を売却している。 正直遣い道のない資金は充分に有った。未だに退職金の一部を使った程度で、残高は殆ど減ってもいないのだ。 それでも、仕事は仕事として割りきらなければいけない。美里さんと打ち合わせたコンサルティングフィーから考えれば当面贅沢は出来そうにない。 小さなオフィスで構わないだろう。来客と打ち合わせる程度のスペースと、デスクにパソコンが置ければ充分な気がする。 飛び込みのクライアントがあるわけでもない。テナントとして一階部分に入るのであれば相応な出費も必要だろうけれど、そんな心配も必要無い。 逆に必要なスペースが小さい事で、物件に限りがありそうな気もする。 山手線沿線の物件情報を探すと、山のように検索にヒットする。坪単価が安ければ建物は古そうに見えるし、新しい建物では冗談のように高い。 いっそ事務所での使用が可能な賃貸のマンションの方が良さそうに思えた。
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