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それから暫くは、小学校の帰宅時間になると、敦が私のことを小学校の正門まで
迎えに来てくれた。
そのせいなのか、あの約束をして反省をしたからなのか。
敦のお陰で、私は男の子たちから苛められる事も、からかわれる事もなくなった。
そして、いつの間にか自分の中で、敦と一緒に居れる帰宅時間が楽しみになっていた。
敦は、帰り道には決まって私を綺麗な夕日の見れる土手に連れて行ってくれた。
どうやら敦のお気に入りの場所らしい。
そこで、寝転がりながら、大きな深呼吸を敦と二人でするのがとても好きだった。
草原に寝転がりながら敦は、今日の出来事や嬉しかった事、悲しかったこと、寂
しかったこと、何でも私からさりげなく聞き出しては、相談に乗ってくれた。
毎日が少しづつ変わりはじめる─。
一ページ一ページ、心に色が付いていくかのように、毎日が楽しいなんて思えるようになってしまう。
今まで、生きている意味なんてない、そう思ってきたからか、上手く感情を言葉で伝えることは出来なかった私の話を敦は、
「うん、うん。」と頷きながら、私を優しく見つめてくれた。
けれど、そんな楽しい日々もつかの間─。
季節が変わり、日の短さを感じる、哀愁漂う夕暮れが近づく頃。
敦と一緒に帰らない日々が少しづつ増えてくることになっていった。
今日も蜩が慌しく日暮れの時刻を寂しげに告げている。
自分は小学生だが、相手は中学生。
きっと勉強も他の事だって、忙しいのだろう。
当然だとも、幼いながらに思えた。きっと、私なんかよりもやるべき事も、悩み
だって色々あるはずなのだから。
いままで、小学生の私なんかに時間を合わせてくれただけでも、感謝の気持ちでいっぱいで。
でも…それなのに、
どこかで敦を待っている自分が居た。
そんな自分の気持ちが、蜩の鳴き声にかき乱されて、グチャグチャで嫌になる。
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