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《それは昔、お母さんが買ってくれた大切な傘》という女の子の会話と、
女の子の傘であろう真っ赤な傘を振り回している
《お母さん、お前に居ないもんな》、《また泣いた、泣き虫!弱虫!!》
という男の子たちの会話から、
この男の子たちに、からわれて泣かされているという状況が呑みこめた。
しかし、自分には特に興味もなく、女の子を助けるという正義感もなかった。
ただ自分は、暇つぶしに公園に立ち寄っただけで、
面倒なガキに絡まれるのは御免かもしれない…っと、
公園の中を横切って帰るのをやめて、
その場を立ち去ろうと公園の出入り口へ傘を振り向けたその時─。
《わぁ!》という大きな男の子の声がいきなりした。
あまりに大きな声だったので、自分も驚いてまた振り返る。
傘越しに辺りを見渡したが、子供たちが怪我をしている様子は見られなかった。
どうやら、女の子の赤い傘の骨が折れてしまったらしく、
べコリとお辞儀をしているかのような形になっていた。
それを見て男の子の1人が、
《やぁ~い!泣き虫!お前が悪いんだからなぁ!》等と、
まだ女の子を茶化し反省もせずにいたが、
子供なりに少し罪悪感もある子もいるらしく
《まずいよな…》という、
1人の男の子の声で、他の2人男の子たちも我に返ったのか、
そそくさと赤い折れ曲がった傘を女の子に投げ捨てて、
走ってどこかへ行ってしまった。
残された女の子は、その場でしゃがみこみ、
赤い傘を抱えて小さく蹲っていた。
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