第2話

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《それは昔、お母さんが買ってくれた大切な傘》という女の子の会話と、 女の子の傘であろう真っ赤な傘を振り回している 《お母さん、お前に居ないもんな》、《また泣いた、泣き虫!弱虫!!》 という男の子たちの会話から、 この男の子たちに、からわれて泣かされているという状況が呑みこめた。   しかし、自分には特に興味もなく、女の子を助けるという正義感もなかった。 ただ自分は、暇つぶしに公園に立ち寄っただけで、 面倒なガキに絡まれるのは御免かもしれない…っと、 公園の中を横切って帰るのをやめて、 その場を立ち去ろうと公園の出入り口へ傘を振り向けたその時─。 《わぁ!》という大きな男の子の声がいきなりした。 あまりに大きな声だったので、自分も驚いてまた振り返る。 傘越しに辺りを見渡したが、子供たちが怪我をしている様子は見られなかった。 どうやら、女の子の赤い傘の骨が折れてしまったらしく、 べコリとお辞儀をしているかのような形になっていた。 それを見て男の子の1人が、 《やぁ~い!泣き虫!お前が悪いんだからなぁ!》等と、 まだ女の子を茶化し反省もせずにいたが、 子供なりに少し罪悪感もある子もいるらしく 《まずいよな…》という、 1人の男の子の声で、他の2人男の子たちも我に返ったのか、 そそくさと赤い折れ曲がった傘を女の子に投げ捨てて、 走ってどこかへ行ってしまった。   残された女の子は、その場でしゃがみこみ、 赤い傘を抱えて小さく蹲っていた。
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