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『ん~、どうかな。美海っ、どうしよっか?こいつ反省してそうか?まだ甘いかな?』
敦は地面にしゃがみこんだまま、大きな目をパチパチさせている美海の両脇を掴
んでヒョイッと身体を起こして、
パンパンッと淡いピンク色のワンピースに付いていた砂埃を軽く叩いて言った。
『 美海はどう思う?まだこいつ、許せないかな?』
美海の瞳が敦の言葉で一瞬曇ったが、その後、少年に目線を移してゆっくりとギ
ザギザ坊主頭の少年の方へ歩いていった。
「なっ、なんだよ!俺は謝ったぞ、来んなよ、なんだよ!寄るなっ!?」
美海は、さくらんぼのついたゴムに結わかれた短いおさげ髪を揺ら揺ら風に揺らせながら、
一歩ずつゆっくりと、何も言わずに近づいた。
目の前まで行き立ち止まると、ワンピースの左ポケットから桃色の花柄ハンカチを取り出して、少年の太い右手に手を当てた。
「なっ、…」
少年は少し口を開いたが、すぐに口をつむいだ。
美海は桃色のハンカチをイガグリ坊主の右手首に優しく巻きつけてあげた。
「おまえっ…」
少年の驚いたような声に 美海は目線をあげて見つめた後、
「…もう、しないでね。」
そういって瞳を潤めながら少し口元を緩めた。
敦は、そんな優しく接する美海の横顔を眺めていた。
「お前…。ほんと、ごめんな。」
少年はそう言って、少し出っ張ったお腹に手をギュっと当てて、ペコッと頭を下げた後、
美海に向かって微かに口元を緩めて美海を見た後、敦に目線を移して、
「お前も、見逃してくれてサンキューな!」
そういって、クルリッと向きを変えて、公園の出口のほうへ走っていってしまった。
そんな少年を美海は、少し心残りがあるような、もどかしい目つきで見送っていた。
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