九番目の交響曲

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「なあに?樫くん」 「なあに…って… その鼻歌、気になって仕事に集中出来ません。 緊張感ないし… しかも、 なんで、『第九』なんですか? 今日は…」 そう、彼女が鼻歌で絶賛演奏中なのは、年末には欠かせない、あの有名な『九番目の交響曲』。 俺の言葉に、篠村さんは「ああ」と、納得したような顔になる。 「年賀状は、今日くらいまでに出しとかないと、元日には着かないよね。 私は到底間に合わないけど」 はあ? 今度は年賀状準備の話? 戸惑う俺に、更に話を続ける篠村さん。 「えーと、ところで 樫くんちは、お雑煮のお餅は『焼く』派?『煮る』派? ウチは、両親が福岡出身だからなのか『煮る』派なんだけど…」 おいおい… 年越して、雑煮かよ。 「篠村さん、今日は…」 「樫くん、知ってる? おみくじって…」 脈絡のない話で、明らかに俺の口から出る言葉を遮ろうとしているようだ。 負けじと声を張り上げた。 「篠村さん! 今日は、クリスマスイブですよね?」
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