九番目の交響曲

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そう、今日は12月24日。 鼻歌を歌うなら95%くらいの人が間違いなくクリスマスソングを選曲しそうなこの日。 彼女は、かれこれ1時間、何故かその大イベントをすっとばした曲を歌っている。 俺にとっちゃ、『第九』は、大晦日なイメージだ。 おそらく… 案の定俺のセリフに、憮然とした表情になる篠村さん。 「私には、関係ないもん。 仕事溜まってるし。 いいじゃないの、 今日だって年末には違いないし。 欧米では ”Merry X'mas and Happy new year” ってクリスマスも年末年始もひとまとめなんだから」 乱暴な持論を展開して、くるりとデスクに向き直り、また作業に戻る。 「ひょっとして… 彼氏に振られました?」 「………」 無言だが、背中に「ギクッ」て書いてある。 面白いほど分かりやすい。 いや、面白がっちゃ悪いんだけど。 成る程、世の中浮かれているイベントは無関係だと、それに関係する事柄を避けていたらしい。 でも、振られたのも無理も無いと思う。 4月にこの設計事務所に入社して以来、教育係として俺の指導をしてくれている彼女を半年あまり見ているけど… 連日深夜残業、休日出勤、国内外への度重なる出張… とても、彼氏と会う時間があるとは思えない。 それくらい、仕事優先な人なのだ。 「仕事と俺、どっちが大事なんだよ!?」って詰め寄られそう。 で、「仕事」って答えそう。 うん、答えたんだろうな。
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