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再び作業に戻り、マウスを動かしていると、デスクの上のケータイが震えた。
「もしもし…?」
口元を手で覆い小声で出る。
相手は今日のセッティング役の1人、大学時代の女友達、ユカだ。
『あ、紅平?
今日ちゃんと来るよね?
女の子側で1人ドタキャンが出ちゃってさー。
こっちじゃ代役見付られなくてさ、あんた女友達多いでしょ?
誰か代わりに来れる子いないー?』
勢い良く大きな声に顔をしかめてしまう。
「行けるように頑張ってこっちもギリギリなのに、ンな、代役探しなんてできねーし。
無理無理」
元々ダメ元で聞いたのだろう。
『あっそう、ならいーや。
じゃ、後でね』
そう言って電話は切れた。
「できました!」
出発予定時刻5分前。
プリントアウトした図面の分厚い束を差し出す。
「へぇ、すごいね。
どれどれ…」
篠村さんは少し目を見開いた後、図面を受け取り目を通し始めた。
なんとか間に合ったー!
そして、
「よぉし、オッケー!
…正直終わるって思わなかったよ」
そう言ってニッコリ笑った。
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