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「あの、私……。
好きな人がいるし」
「だから、知ってるって」
「それに、……今日、
大事な話があるからって
相良先輩から図書室に
呼び出されてるし」
金づちの音が、止んだ。
「――マジで?」
「あの……」
心臓が、
ドキドキドキドキ、
うるさい。
「だって……わたし……」
田辺が立ち上がる。
私の方につかつかと近づく。
そして、――。
目を見開いた私の肩を掴んで
身を屈め、唇を重ねた。
一瞬のことだった。
「……」
私は固まったまま、
目の前の田辺の顔を
見つめていた。
ゆっくり顔を離し、
じっとこちらを見下ろす。
「……俺にしとけって」
「……」
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