197人が本棚に入れています
本棚に追加
田辺の大きな手が、
優しく私の頬を撫でた。
――近くで見ると、
意外とまつげ、長い……。
その目をぼんやり
見返していたわたしは、
唐突に我に返った。
慌てて立ち上がると、
椅子が大きな音を立てて跳ねた。
「ト、……トイレ……」
ロボットのような動きで
ぎくしゃくと歩き出そうとして、
椅子につまづく。
あっ、と声を上げて
倒れそうになった次の瞬間、
――わたしは田辺の腕に
抱き留められていた。
最初のコメントを投稿しよう!