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田辺の大きな手が、 優しく私の頬を撫でた。 ――近くで見ると、 意外とまつげ、長い……。 その目をぼんやり 見返していたわたしは、 唐突に我に返った。 慌てて立ち上がると、 椅子が大きな音を立てて跳ねた。 「ト、……トイレ……」 ロボットのような動きで ぎくしゃくと歩き出そうとして、 椅子につまづく。 あっ、と声を上げて 倒れそうになった次の瞬間、 ――わたしは田辺の腕に 抱き留められていた。
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