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「バカ、気をつけろよ」 「ご、ゴメン……」 頭の中がパニックを起こし、 何が何だか分からない。 ――今の、なに? もしかして…世に言う、 ……キス? そして今、わたしは――。 田辺の、腕の中にいる。 「ま、待って……。 ちょっと、待って」 大きな掌手のひらが、 私の頭の後ろを支える。 「ちょっと、……待っ……」 そしてもう一度、 強引に唇が塞がれた。 身体の力が抜ける。 押し返そうとしたけれど、 力が入らない。 「……ごめん。止まんなくなった」 田辺は唇を離し、 バツが悪そうな顔をした。 私を立たせると、倒れた椅子を 片手で軽々と起こし、 また作業に戻って行く。 ――トントントン…… カンカン、カン……。 数分後、トモコとヒロシが 教室に入って来るまで、 私はその場に立ち尽くしていた。
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