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私は、震えた手でかろうじてチョコレートをつかみ、ひとかけらを口に入れた。
甘味料で味付けされた甘いはずのカカオは、なぜか苦い。とうとう味覚がおかしくなってしまったのだろうか。否、それとも――。
私は、橋の欄干から夕陽をみつめる。
この夕陽をまた見られる日はあと何日あるのだろう?
そう――私に遺された時間はわずかしかない。
走馬灯のように、今までの彼との思い出が蘇ってくる。
初めて出会った時の、彼のはにかんだ表情。彼とクリスマスで一夜を過ごした素敵な時間。公園のベンチに二人で座って食べたポテト。川べりで初めて唇をかわしたとき――……
しかし、私の記憶は、次には重苦しくて暗く、青い部屋へと変わった。
レントゲンが貼られた独特な空間。医者の淡々と告げる言葉。
私はあまりのショックに言葉を発せなかった。
ご飯もうまく胃に入らない。夜も眠れない日が続き、私は痩せていった。
大好きな妹にも、日々募る焦りで八つ当たりをし、自己嫌悪に陥っていった。
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