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だいたい、いい気になって
先輩と田辺を天秤に
かけるような真似してること自体、
間違ってる。
どっちを選ぶべきか、とか、
……そういう考え方をするから、
自分の気持ちが分からなくなるんだ。
その事に今さら気付いた自分が、
無性に恥ずかしくなる。
あの朝の、私を見つめた
田辺の真っ直ぐな目を思い出すと、
胸がきゅっと音を立てた。
「――あ、彩加ちゃんっ、
来たよ、お客さん」
しほりに言われて覗くと、
カップルが手を握り合いながら
ゆっくりと近づいてくるのが見える。
田辺の気持ちは、嬉しい。
――それでも――。
やっぱり私は、先輩への
片思いを無かったことには、
出来ない。
私は心のもやもやを振っ切るように、
「キエエエエエエ」と奇声を発しながら
勢いよく飛び出した。
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