高峰 章吾 - 弐 -

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「しかしお前は偉いな。式とかそういうの、橘の要望に答えてやったんだろ?」 「ま、殆どな。でも絶対嫌なのも主張はしたぞ。ファーストバイトは出来んと突っぱねた」 「ファーストバイト?何っすか?それ」 高見に“切り分けたケーキを新郎新婦で互いに食べさせあうやつ”と説明すると納得したと同時に笑いを堪えてる。 二階堂が“あーん”とかやるのを、絶対想像しただろお前。とはいえ、俺もつい想像してしまい、苦笑いを浮かべた。想像するもんじゃ無いな。 そんな俺等を見透かすように二階堂は睨みつける。 「お前等も人事じゃねーんだからな。特に高峰、俺関係無いって顔してんなよ」 「別にそんなつもり無いんだけどなー。何だよ二階堂、説教はやめろよ?」 「フン、お前にはその位が丁度いいだろうが」 相変わらずな二階堂の言い様。橘を通じて熊谷と付き合いだしたのも知ってるんだろうしな、コイツ。 結婚ねぇ・・・。この年代は嫌でも考えるんだろうな。 俺が結婚するなんて姿は想像出来ねーけど、したとしてもこういう披露宴とかはやはり選択出来そうにない。 そんな中、少し離れた位置にいる熊谷の言葉が俺の耳へ届いた。 「私は結婚とか、今は全く考えてないんで」 どんな会話の中の台詞なんだか、前後の会話は全く聞いてなかった。 誤魔化すように笑いながら雨宮さんや三崎に言ってみせる熊谷の言葉が、たまたま聞こえただけ。 俺と熊谷が付き合いだしたのは7月。“もう、降参します”と苦笑いしてみせた熊谷は可愛かった。 熊谷との付き合いは友人としてはそれなりにあるから、俺の性格も考えも把握してるんだよな、アイツは。 ・・・あの台詞は俺が言わせてる気がするな。
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