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「ちょっと真奈美、そういう言い方やめなよ」
そんな私に気付いたのか、好美が私を庇う様に言ってくれる。
だがそんな好美のフォローすら気に止めないように絵里が口をついた。
「でも典子程順調だと言いたくなっちゃうよね。だってそこは絶対わかんない部分だろうからさぁ・・・」
高校から知った仲だ。私の今までの恋愛がどうだったのか、皆知っている。
絵里のように色んな男と付き合ってきた訳でもなければ、好美や真奈美みたいな不倫もした事がない。
経験ないからわからないでしょと言われれば、言い返す言葉なんか浮かばない。
「くだらない言い方して煽らないでよ絵里も。典子、気にする事ないからね」
気遣ってくれた好美に気にしてないからと笑って告げた。
でもそれでその話は終わらずに絵里は続けた。
「典子ってさ、言う事は本当にもっともだよね。その通りなんだけどさぁ・・・。でも真奈美だってわかってるんだって。断ち切るのが一番いいって。それが出来ないから、せめて何処かで吐き出したいわけでさ」
店員を呼び出す呼び鈴ボタンを押しながら、絵里は更に続ける。
「特に典子って全てにおいて順調過ぎるしさ。同じ言葉でもさぁ、そういう人からの言葉だからこそきつい場合だってあるのよね」
絵里の言いたいことはわからなくも無い。だからって頷きたくも無い。何だろう、この納得いかない感じは。
ムスッとして私はその言葉に何も答えずにいた・・・というか何と表していいかわからなかった。
そんな私の様子なんか気にもせず、やってきた店員に梅酒を注文する絵里。
この状況に申し訳なく思ったのか、真奈美が口を開いた。
「ごめん、私のせいで変な空気になっちゃって。絵里の言う通りでわかってはいるんだけど・・・ごめんね典子」
サラッと謝ってみせる真奈美だけど、何気に絵里と意見一緒だよって言ってるよね。
そう思うと謝られているのに心から頷く事は出来なかった。
でも私だって久々の集まりを嫌な空気のままにしたくない。
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