橘  典子

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結局その後は当たり障りない話題に切り替わり、皆気分を切り替えて飲んだ。 店を変えても話すのはやはり職場が違う事もあって、恋愛話が多くなった。 今迄の恋愛話、今までの男と寝た時の話から下ネタ話になった。女同士も酒が入ると卑猥な事も平気で言うし、妙に盛り上がった。 そんな場の空気を読んで私は適当に合わせていたけれど、心から笑えるわけも無かった。 帰りのタクシーの中で、いつも以上に疲れた自分を感じていた。 恋愛話は好きだし、下ネタ話が苦手って訳でも無い。 じゃあ何でこんなにやり切れないような気分でいるんだか。多分疎外感だ、これは。 今迄付き合った男は3人。 1人は中学の頃の幼すぎる恋愛で自然消滅。 2人目は高校卒業後にセックスに失敗してからギクシャクして別れた。そして3人目が崇。 つまり男は崇しか知らないし、自分から好きになったのも崇だった。後は告白されて何となく付き合ってただけ。 正直言って別れのダメージも、そんなに無かった。崇とは喧嘩もロクにしない程順調。 笑えるくらい薄くないだろうか、私の恋愛遍歴。 ううん、学校も順調で楽しく過ごした記憶の方が多い。部活動はしてなかった、受験は人並みに勉強して進学出来た。 仕事だって今の会社にすんなり入社出来て問題なく勤めている。 ―――何て薄いの、私の今までって。 タクシーから降りたのは崇のマンションの近くだった。マンションの前の階段を上ると突風が吹いた。 木々が揺れて足元に落ちていた枯れ葉が舞い上がり、カサカサと音を立てる。 外灯の明かりだけで照らされている深夜の道は、いつも以上に寂しく感じられた。 何だろう、この虚無感は。 風に舞う枯れ葉は本当に軽く、色も無く、味気ない。まるで私の人生みたいじゃない。そう思うと一層気落ちしてきた。 歳を重ねて振り返った時、私は語れる何かってあるんだろうか。 そんな自分のままで本当にいいんだろうか。 その場に立ち止まったままだった私は我に返ってマンションへ入っていった。 崇はまだ起きていたけれど、何故かいつものように自分の悩み全てをぶちまける事が出来なかった。
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