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結局崇に何も言えないまま日曜日は過ぎていき、月曜になってしまった。
土曜日の飲み会から何処か気落ちしてしまっている自分が嫌で、親友の美月と話したいと思っていた。
美月は私の話を真摯に聞いてくれるし、きっと違う視点から意見もくれる。
けれど、そんな話をしてる場合じゃない事態が起こっていたのを、昼の社員食堂で知ることとなった。
「あ――――!!!イラつくっ!!!」
社員食堂で叫ぶ三崎ちゃんの声が響き渡って、周囲の人が此方をチラチラ眺めていた。
「三崎、アンタのかん高い声は響く。落ち着きなさいよ」
慌てて熊谷がそう言って三崎ちゃんを抑えた。
美月が同じ営業の坂井主任に、ここの所好意を寄せられているのは聞いていた。
顔、仕事、性格、全てに文句無い坂井主任の人気は高い。
私も坂井主任と付き合ってみれば良いのにと思っていたが、当の本人は乗り気じゃな無さそうだった。
そんな美月に業を煮やしたのか、坂井主任はあからさまに態度に出していたみたいだ。
それを見た女子社員が嫉妬して美月が嫌がらせを受けた事を、三崎ちゃんが怒り交じりに私達にぶちまけた。
「むかつく」
定食の卵焼きをグサッと刺しながら私は怒りを露にした。
間宮って女が中心になってやりだした事らしいが、職場でそういう事する神経がわからない。
坂井主任も出張中でいないし、私をはじめ三崎ちゃんも熊谷も美月を心配して対策を練ったけど良い案は出ない。
結局、悪化したら上司に相談するからという美月に、その場は納得した形で話は終わった。
仕事に戻っても苛立ちは収まらない一方で、坂井主任を押していた自分の事を省みていた。
美月はスラリとした長身に細いけれど女性らしい体系。美人だし男性に人気がある。
でも当の本人は自覚が無いのか鼻にかける事も無く、恋愛にも消極的。
見かけの容姿と余り喋らないせいか誤解される事も多いけれど、どんな話も流さずに聞いてくれるし、私の言葉の裏側にある思いすら察してくれるような温かさを持つ美月は、私にとってかけがえのない存在だった。
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