橘  典子

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食事を終えて後片付けをしながら崇を見ると、リビングでテレビを見ていた。 食器を洗いながら考える。 結婚したらこの風景が日常になるんだろうな、と。 悪くはない。 でも大きな感動がそこにあるのかも想像出来ない。 私と崇が付き合って、かれこれ4年経過する。 彼は私と一緒の会社で、サービスエンジニアとして働いている。 長身で目つきが悪い崇は、見た目ちょっと怖い。 でも思いやりもあるし、仕事熱心ですぐ好きになって告白した。あっさり承諾してくれた彼とは順調で、彼が大人なのか喧嘩も全くしない。 お互いの実家にも行き来したせいもあるのか、最近周囲は結婚という言葉を口にする。 気が付けば“そういう雰囲気”になっていた。 相手は崇で申し分ない。 仕事は出来る。春から本社に転勤になった位だし。浮気とかそういう心配も多分無い。 “女なんか1人で充分。他にも構う余裕とか無い、面倒くさいだろ” が、彼の言い分。ギャンブルも全くしない。 色んな意味で、結婚するには申し分ない男だと思う。 そう、本当に申し分ない。 だから自分の中にある、この盛り上がらない気分が最近本当に嫌だ。 私は色んな意味で恵まれすぎていると思うのに。そこに何の不満も無いはずなのに。 そんな事を頭に過ぎらせながらダラダラとすごしている内に、あっという間に夕方になってしまった。 休日は本当に時間が過ぎるのが早い。 飲み屋の近くまで崇が送ってくれ、待ち合わせの居酒屋へと入る。 予約してあった個室には既に好美の姿があった。
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