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「ん・・・何かさ、奥さんに子供が出来たみたいなんだよね」
真奈美が吐き出すようにそう言うと、場の空気が重苦しく変わった。
既婚者の男性と付き合ってると、そういう問題には嫌でもぶつかるんだろう。正直、何て言えばいいかわからず、私は口をつぐんでいた。
だがその空気を読まないかのように、枝豆をつまみながら絵里が口を開いた。
「頃合いじゃない?やっぱさ、妻に勝てても子供には勝てないと思うんだよね」
サバサバと言ってるが、核心を突いていると思った。絵里の言葉に好美も頷く。
「辛いだろうけど、私だって春人と会えたわけだし。頑張って離れるべきだよ」
好美も交際相手が結婚してしまった上に、その相手と関係が断てなかった。
不倫状態になって苦しんでいた所で今の彼に出会え、好美はその関係を断ち切る事が出来た。
給料が安いし・・・なんて結婚前なのに口をついたりしてるけど、本当はそんなのは大きな問題じゃないに違いない。
そんな事を考えている時、真奈美が項垂れながら呟いた。
「結果論じゃない・・・そんなの。わかっててもどうにもならないんだもの」
弱気な真奈美が見てられない。そう思うと思わず口を開いていた。
「好美だって乗り越えて今幸せなんじゃない。あれだけ皆がやめとけと言っても続けたのは真奈美で、結局こんなに苦しんでる。今頑張って別れる時なんじゃないの?」
私がそう言うと、項垂れていた真奈美がガバッと顔を起して私を睨んだ。
「典子には言われたくない。私の気持ちなんか絶対わかんない癖に」
その言葉は私の奥底にグサリと突き刺さった。
一瞬顔が強張ってしまったのが自分でもわかった。
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