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「……だめ、だよ、
……田辺……」
じりじりと後ずさると、
すぐに机に突き当たった。
逃げる前に、田辺の手が
しっかりと私の腕を掴む。
「……行かせない」
「だめだってば……」
哀しげな田辺の目に、
わたしの泣き顔が映っている。
「絶対、行かせない」
田辺の腕が私の体を包んだ。
そのまま、力任せに抱きしめる。
私は目を閉じ、
田辺の制服をぎゅっと握った。
……気持ちいい。
田辺の腕の中は、
あったかくて、優しくて……。
胸が微かに、苦しくて――。
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