闇の入口

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**数時間前** 仕事帰りの奈津美は雨の中たたずんでいる男を見かけた。 いつもは気にしないが寂しそうな男の顔が印象的で自分の傘を差し出した。 「それ以上濡れると風邪ひくよ。」 差し出した傘にはポツポツと雨の音が響いている。 男は驚いて顔をあげた。 一瞬、男の整った容姿にドキッとしながらも奈津美は笑顔でもう一度、傘を差し出した。 「はい。」 「ありが…とう…。 名前を教えてもらえますか?」 「杉本…奈津美です。 あっ、傘は返さなくて大丈夫ですよ、」 傘を渡しながらクスッと笑った。 「じゃあ。」 奈津美はバックを頭の上に乗せて駅への道を走って行った。
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