冷たいサンタクロース

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☆★☆ 結局ハヤトに何も伝えられないまま、クリスマスイブがやってきた。 何となくすぐに帰りたくなくて、特に急ぎでもない仕事を理由に1時間程残業してからオフィスを出る。 「さむっ……」 痛いくらいの冷たい風に、オフィスで暖まっていた身体が、きゅっと縮こまった。 クリスマスイブでなければ何てことはない、ありふれた平凡な火曜日。 それなのに――予定がない事が、こんなにも寂しい。 見上げると、灰色の厚ぼったい雲が空を覆っていて、今にも雪が降り出しそうだ。 「……ホワイトクリスマスになるのかな……」 はあ、と真っ白な息を吐き出して呟いた私の横を、仲良く手を繋いだカップルが通り過ぎて行く。 寂しさが込み上げて鼻の奥がツンとしてきたが、私はそれに気づかないフリをして足早に駅に向かって歩いた。
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