冷たいサンタクロース

18/21
前へ
/23ページ
次へ
マンションのエレベーターが私の部屋の階で停まる。 自分の部屋に向かって共用の廊下を歩いていた私は、ピタリと立ち止まった。 「……ハヤト?」 ……うそ……何でいるの……。 私の部屋の玄関の横にハヤトの姿を見つけて、ドクンと心臓が跳ね上がる。 ハヤトはサンタ帽を被って、マフラーに顔をうずめるようにして立っていた。 私に気づくと、ハヤトはちょっと不満そうに声をあげる。 「遅いよ、ユキナさん。」 「……」 「マジで、寒くて凍りつくかと思った。」 「……」 「おーい、ユキナさん。聞いてる?」 「……どうして……」 「え?」 「どうして、ここにいるの?他の女の子と会ってるんじゃ……」 「は?そんなわけないだろ。ユキナさんがいるのに……」 「だってっ……ハヤト、何も言ってくれなかったじゃない。 クリスマスイブに会いたいとも、会おうとも……。 それに、私の前でバイトの依頼を受けてたでしょ? だから私、ハヤトはクリスマスイブに私と会うつもりなんてないんだ、て思って……」 「バイトを入れたのは、ユキナさんも昼間は仕事で会えないと思ったからだよ。」 「でもっ、ハヤト最近全然会ってくれなくて……私、すごく寂しくて……」 「ユキナさん……」 ハヤトは、ポケットから小さな箱を取り出すと、す、と私の前に差し出した。 「……これ、」 「……な…に……」 「……サンタクロースからお届け物……」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

251人が本棚に入れています
本棚に追加