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『ぐっ、ゴホッゴホッ…』
「あっ、敦!?」
急に敦が喘息のように咳き込みだした。
「だっ、大丈夫?敦?」
『…ゴホッゴホッゴホッ。はぁ、大丈夫大丈夫。実は最近、風邪を拗らせていて
さっ。だから美海に逢えなかったってわけ。…はぁ。御免な、急に。』
敦はそう言いながら、徐に右のズボンのポケットから何か白い薬のような粒を取り出し口に投げ込んだ。
「…大丈夫なの?敦?」
ヒュッヒューというような不自然な呼吸をしている敦が心配で、急に胸が締め付けられるように苦しくなった。
『あはは!大丈夫だよ、美海!心配性だな?』
「…でも」
『大丈夫だよ、美海。』
「…うん。」
敦は、グッと美海の肩を自分の胸に押し当てて、ヨシヨシッと頭を撫でた。敦に引き寄せられた美海は、敦のまだ少し乱れている心臓の音を聞いていた。
ドクドク足早に動く心臓音にも、何故か少し安心させられた。
『あ、そうだ!美海に渡したいものがあるんだっ』
「…うん?何っ?」
美海は、敦に凭れかかりながら遠く透き通るような空を見つめて聞いていた。
『これ!』
敦が左側のポケットから小さなプラスチックの四角い箱を取り出して美海に渡した。
「え?」
美海は、ドキッとした。
海外に行く前に、恋人から貰うものって。
つまり…。
恐る恐る小さなケースの蓋を開けてみた。
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