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正午のポカポカする土の匂いを感じながら、
ゴロンと横になって大の字に寝ていると、とても気持ちが良かった。
川の流れと草のざわめきに調和するように鼻歌を口ずさんでいた。
突然 ふいに見つめたりしないで
優しい笑顔で振り向くのだって
反則だょ
困った時は傍に居て 哀しい時は抱きしめてくれる
こんなに優しくしないでよ
なんでそんなにずるい顔
逢いたいと願っても、祈っても泣いたって叫んだって
消せない記憶…消えない想い
貴方に会いたくて逢いたくて 瞳閉じれば貴方の…笑顔ばかり…
どうしてなのだろうか。
そう─、
笑顔ばかりに逢うのだ。
私は歌詞が続けられず、額を両手で押し当てた。
唇を軽く噛み締めて。想いを潰さぬように。
「…っなんでっ」
秋風が私の前髪を一瞬生温かく、すり抜けた。
優しくはない、ほんのりと冷たく。
するとっ、突然─
ぺチョッっと、頬に冷たい何かが触れたので、思わず飛び起きる。
「~ひゃ!!なっ!?何っ??氷?…雨?」
飛び起きて振り向くと、後ろにニヤニヤ笑っている、
…あいつがいた。
彼の手元にはアイスの袋を2つ持っているように見えた。
どうやら彼に頬っぺたにアイスの袋をつけられたらしい…。
ニュッと長い彼の手が、急に美海にアイスを差し出した。
ガリガリ君の袋を見たのは何年ぶりだろう。
変わっていないラムネ味のアイスのパッケージが、どこか懐かしかった。
「…何よ?いっ、いらない。結構ですっ…」
美海は横目でアイスを見ながら、頑なに拒絶したが、
あまりにもあいつが勧めるので、オズオズ手に取った。
『お前に、買ったんだからさ、食べろって!』
「…あ、ありがと…」
美海は、何かリアクションに困ったが、小さい声でお礼を言った。
あ。
「まさか、あなた!もしかして、泣いてるのかと思って、
慰めてくれ…てんの?」
美海は少し溶けかけているアイスを握りしめながら、
キョトンっとスラリと長身の彼を足元から見上げた。
『別にっ…ただのこの前の病室の、…お礼だよ。』
あまりに不貞腐れそうに言うので吹き出しそうになってしまった。
「ふ~んっ。…変なの。」
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