第5話

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正午のポカポカする土の匂いを感じながら、 ゴロンと横になって大の字に寝ていると、とても気持ちが良かった。 川の流れと草のざわめきに調和するように鼻歌を口ずさんでいた。 突然 ふいに見つめたりしないで 優しい笑顔で振り向くのだって  反則だょ 困った時は傍に居て 哀しい時は抱きしめてくれる こんなに優しくしないでよ  なんでそんなにずるい顔 逢いたいと願っても、祈っても泣いたって叫んだって 消せない記憶…消えない想い 貴方に会いたくて逢いたくて 瞳閉じれば貴方の…笑顔ばかり… どうしてなのだろうか。 そう─、 笑顔ばかりに逢うのだ。 私は歌詞が続けられず、額を両手で押し当てた。 唇を軽く噛み締めて。想いを潰さぬように。 「…っなんでっ」 秋風が私の前髪を一瞬生温かく、すり抜けた。 優しくはない、ほんのりと冷たく。 するとっ、突然─ ぺチョッっと、頬に冷たい何かが触れたので、思わず飛び起きる。 「~ひゃ!!なっ!?何っ??氷?…雨?」 飛び起きて振り向くと、後ろにニヤニヤ笑っている、 …あいつがいた。 彼の手元にはアイスの袋を2つ持っているように見えた。 どうやら彼に頬っぺたにアイスの袋をつけられたらしい…。 ニュッと長い彼の手が、急に美海にアイスを差し出した。 ガリガリ君の袋を見たのは何年ぶりだろう。 変わっていないラムネ味のアイスのパッケージが、どこか懐かしかった。 「…何よ?いっ、いらない。結構ですっ…」 美海は横目でアイスを見ながら、頑なに拒絶したが、 あまりにもあいつが勧めるので、オズオズ手に取った。 『お前に、買ったんだからさ、食べろって!』 「…あ、ありがと…」 美海は、何かリアクションに困ったが、小さい声でお礼を言った。 あ。 「まさか、あなた!もしかして、泣いてるのかと思って、 慰めてくれ…てんの?」 美海は少し溶けかけているアイスを握りしめながら、 キョトンっとスラリと長身の彼を足元から見上げた。 『別にっ…ただのこの前の病室の、…お礼だよ。』 あまりに不貞腐れそうに言うので吹き出しそうになってしまった。 「ふ~んっ。…変なの。」
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